就業規則に書いてある事項と労働者個人と結んだ労働契約に異なる事項があるときにはどちらが優先するのですか?
就業規則に記載されている事項に違反する労働契約を締結した場合、就業規則の基準に達しない労働条件を定める労働契約の部分は無効となり、無効となった部分は就業規則に定める基準によることになります(労契法12)。これを就業規則の最低基準効といいます。したがって、就業規則を下回る労働条件を個別労働者と合意をしても、就業規則の定める労働条件によることになります。他方で、最低基準効があるのは、「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める」労働契約の部分に対してだけですので、就業規則の基準を上回る労働条件を個別の労働契約で定めた場合には、その部分は就業規則による影響を受けず、労働契約で定められた労働条件によることになります(労契法7ただし書)。
なお、就業規則は、法令や労働協約に違反してはならず、就業規則と労働協約が異なる場合には、労働協約が優先して適用されます(労組法16、労基法92、労契法13)。
この就業規則の最低基準効が適用されるためには、その周知が必要ですが、この場合の「周知」とは、労基法106条(労基則52の2)の定める厳格な周知のあった場合だけではなく、労働者が知ろうと思えば知ることができる状態に置けば、ここでいう「周知」があったことになります。これを「実質的周知」といいます。例えば、就業規則は「各作業場の見やすい場所」に掲示または備付けが規定されています(労基則52の2(1))が、食堂や更衣室に備え付けられている場合であっても、実質的周知となります。