事業者・労務管理担当の方のQ&A

賃金

従業員が給料を前借りしたいと申し出てきました。前例がないので、どのような点に気を付ければよいのでしょうか?

労基法25条には非常時(出産、結婚、病気、災害等)について、給料日前でも給料を支払うように定めています。
しかし、この条文で定めているのは、既に行った労働に対して給料日前でも支払うように定めているのであって、これから行う予定の労働に対して給料を支払うように求めているものではありません。従って、前借りに応じる義務はありません。

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前借り

  • (1)一定期日払いの原則と前借り
    労基法24条では、賃金の一定期日払の原則を規定しています。基本的に会社は毎月一回以上、定期的に支給日を守ってさえいれば、労働者が前借りを申し出たとしても、これに応じる法的な義務はありません。
    ですので、給料の前借りができるかどうかは会社の判断に任せられることになりますので、それに応じなくても法違反になることはありません。
  • (2)非常時払(労基法25条)と前借り
  • ⅰ)趣旨
    労基法24条により賃金の支払期日が定められた場合に、使用者はその期日に賃金を支払わなければなりませんが、反面、労働者も、特約がある場合以外は、支払期日が到来するまでは賃金の支払を請求することはできません。非常時払を規定した労基法25条は、賃金を唯一の、少なくとも主要な収入源とする労働者に、出産、疾病、災害等の不時の出費を必要とする事情が生じた場合、その賃金の繰上払を請求し得ることとして、一定期日払の原則によっても救い得ない労働者の不便を補ったものです。
  • ⅱ)繰上払の対象
    繰上払の対象とするのは、「既往の労働に対する賃金」であり、これに対する労働者の反対給付は既に使用者が受領したものですので、民法の賃金後払の原則を否定するものではなく、単に一定期日払に対する特則を定めたものと言えます。
  • ⅲ)非常時払い
    以上から、労基法25条は、「既に行った労働」に対して給料日前でも支払うように定めているのであって、これから行う予定の労働に対して給料を支払うように(前借り)求めているものではありません。
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