事業者・労務管理担当の方のQ&A

賃金

経費節減や売上増進・在庫調整などのため自社製品や取引先の様々な製品を定価の6割で評価して賃金の一部として現物支給するのは問題があるでしょうか?

労基法24①は、賃金は、通貨で直接により支払わなければならないとして通貨払の原則を規定しています。従って、原則として現物支給は認められません。
ただし、労働協約等に別段の定めがあれば通貨以外のもので支払うことができますので、労働組合がある場合は、労働協約によって別段の定めをしていればその労働協約の適用を受ける労働者に対して現物支給をすることができます。

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通貨払の原則・例外

  • (1)通貨払の原則 (労基法24①)
    通貨払の原則は、貨幣経済の支配する社会において最も有利な交換手段である通貨による賃金支払を義務付け、これによって、価格が不明瞭で換価にも不便であり、弊害を招くおそれが多い実物給与を禁じたものです。
  • (2)通貨払の例外(労基法24①但書)
    • ①法令に別段の定めがある場合
      現在、別段の定めのある法令はありません。
    • ②労働協約に別段の定めがある場合
      • ⅰ)労働協約
        労働協約とは、労働組合法でいう労働協約のみをいい、労働者の過半数を代表する者との協定は含まれません。なお、労働協約の定めによって通貨以外のもので支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られます(昭63.3.14 基発第150号・婦発第47号)。
      • ⅱ)実物給与の評価
        通貨以外のもので支払われる賃金も、原則として、平均賃金(労基法12)及び割増賃金(労基法37)の算定基礎に含まれるため、その物又は利益を通貨に換算評価することが必要であり、労基則2②によれば、法令に別段の定めがある場合のほかは労働協約で評価額を定めておかなければならないものとされています。
    • ③厚生労働省令で定める賃金について確実な支払いの方法で厚生労働省令で定めるものに拠る場合
      • ⅰ)労基則7条の2では、労働者の同意を得ることを条件に、a指定された銀行口座、所定の要件を満たす証券総合口座への振込み、b自己宛小切手等による退職金の支払いを認めています。
      • ⅱ)賃金の銀行口座への振込み
        労基則7条の2①では、「使用者は、労働者の同意を得た場合には賃金の支払について当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができる」とされています。 賃金を口座振り込みにより支払う方法は、次の要件を満たさなければなりません。
        • a 労働者の同意があること
        • b 労働者が指定する本人名義の預金又は貯金の口座に振り込まれること
        • c 振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に引き出し得ること
      •  また、平成10年の労基則改正により設けられた労基則7条の2②では、証券会社の一定の要件を満たす預り金である証券総合口座への払込みによる賃金の支払も認められることとなりました。
        この同意については、労働者の意思に基づくものである限りその形式は問わないものであり、指定とは、労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば同項の同意が特段の事情のない限り得られているものと解されます。なお、振込みとは、振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得るように行われることを要するものです(昭63.1.1基発第1号)。
      • ⅲ)賃金の小切手による支払い
        賃金の小切手払いは、小切手が我が国の現状では必ずしも一般に普及している支払手段とはいい難く、これを受け取った労働者に若干の不便を与えるものであり、さらに、会社の振り出す小切手は不渡となるおそれもあることを考えると、賃金全般について、振出人を特に限定せずに小切手等の交付による支払いを認めることは、適当ではないとされています。
      • iv)賃金のデジタル払い
        労働基準法施行規則が改正され、令和5年4月より、労働者の同意を得た場合に賃金のデジタル払いが認められることとなりました。賃金のデジタル払いとは、使用者が労働者に対して、賃金を指定資金移動業者(●●payなど)の口座にデジタルマネーで支払うことをいいます。
        使用者が賃金のデジタル払いを開始しようとする場合には、必要事項について労使協定の締結が必要です。また、デジタル払いのほかに、銀行口座等への支払いもあわせて選択肢として提示した上で、労働者の同意を得なければなりません。
        なお、賃金のデジタル払いは、従来の銀行振込み等の賃金支払い方法と並ぶ選択肢の一つであり、デジタル払いを強制してはならないことに留意が必要です。
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