事業者・労務管理担当の方のQ&A

解雇・雇止め

有期労働契約の場合、契約期間が満了すれば直ちに労働契約関係はなくなるのですか。

有期労働契約雇止めの法理(労契法19)があって、これが適用される場合には、契約期間が満了したからといって、直ちに労働契約関係がなくなるわけではありません。
有期労働契約を締結している労働者からの更新の申込みがあった場合、それを承諾するかどうかを、使用者が全く自由に決定できるわけではありません。①ア)有期労働契約が反復更新され、雇止めが解雇と同視されるような関係にある場合、または、イ)労働者が労働契約の更新を期待するについて合理的な理由がある場合であって、②その雇止め(更新拒絶)が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には、労働者から更新の申込みがあれば、有期労働契約の更新を使用者が承諾したものとみなされます(労契法19条)。これを「雇止めの法理」といいます。
この考え方は、東芝臨時工解雇事件最高裁判決(昭和49年7月22日最高裁(1小)判決)および日立メディコ事件最高裁判決(昭和61年12月4日最高裁(1小)判決)などの判例の積み重ねの後に、平成24年労契法改正で立法化されたものです。前者の判決は、「期間の満了ごとに当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた」有期労働契約の更新拒絶(雇止め)について、解雇に関する法理を類推適用すべきであると判断したものです。

https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/00385.html

また、後者の判決は、期間の定めのない労働契約と同視できるまでには至っていなくても、雇用関係にある程度の継続が期待され、現実にこれまで契約が更新されていたという事実関係で、解雇権濫用法理が類推適用されると判断したものです。

https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/03801.html

労契法19条は、これらの判例の積み重ねを法律の条文として規定したものです。雇止め法理を適用される状態にあるのかどうか(実質的に無期労働契約と同視できる状態にある場合または更新の期待に合理的な理由がある場合かどうか)、また、その雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」かどうかは、契約期間満了時における実態的判断ですので、契約当初にはこの契約は更新しないと労働条件通知書に記載されていても、現実には更新を繰り返されて雇用されていたり、周囲の有期雇用労働者に更新をされる者が多かったり、当初の契約時やその後の契約期間中に更新の期待を持たせるような言動が使用者にあったりした場合には、雇止め法理が適用されることになります。

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成 15 年厚生労働省告示第 357 号)

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/dl/s0223-12v.pdf
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/12/dl/h1209-1f.pdf

なお、令和5年3月30日に、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が一部改正され(基 発 0330 第 1 号「労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について」第2)、使用者は、有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならないことを内容とする改正が行われ、これが令和6年4月1日から適用されることにご注意ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001080722.pdf

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