事業者・労務管理担当の方のQ&A

解雇・雇止め

退職願を出した労働者がこれを撤回したいと言ってきた場合、撤回を認めなければならないのですか。

一般に、「退職願」は退職をしたいという労働者からの意思表示です。これには2つの可能性があります。一つは、「退職願」とあるように、退職をしたいのでこれを承認してほしいという意思表示の場合と、使用者の承諾の有無にかかわらず退職をするという一方的意思表示の場合です。後者の場合には、「退職届」という名称であることが多いでしょうが、この両者が厳密に区別をしないで使われることもあります。厳密に区別をすれば、前者は「合意退職の申込み」で、これに対する使用者の承諾があって退職の効力が発生します。後者は「辞職」とも呼ばれ、期間の定めのない労働契約では、労働者からの一方的意思表示で2週間の予告期間を置けば(民法627①)、退職の効力が発生します。
そして、退職の申入れの撤回は、その申入れが辞職なのか合意退職の申込みなのかによって、いつまで可能か異なります。
まず、辞職であれば、相手方(使用者)への意思表示の到達によって辞職の効力が発生して(民法96)、その段階で、もはや撤回をすることができなくなります。
次に、それが合意退職の申込みであれば、承諾したとき(正確には承諾の意思表示が到達したとき)に合意が成立します(民法522)ので、相手方が承諾するまでの間は撤回可能です。ですから、例えば直接の上司に合意退職の申込みの趣旨で辞表を提出しても、退職承諾の権限を有する者に届くまでの間は撤回可能ということになります。
すなわち、辞職の意思表示であればそれが到達するまでの間(例えば郵送をした場合にそれが使用者に届くまでの間)、合意退職の申込みであればそれに対する承諾があるまでの間は、撤回が可能です。もちろん、これらの期間を過ぎたとしても、使用者が撤回を認めれば、それでもかまいません。
なお、現実に難しい問題は、辞職の意思表示なのか合意退職の申込みの意思表示なのか区別がつかないときにどうするかですが、辞職が重大な効力を有することから、区別のつかないときには合意退職の申込みと解釈されると考えられます。

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