事業者・労務管理担当の方のQ&A

雇用契約

我が社のある面接担当官が踏み込んで訊いてしまったのか 、労働局から指導を受けました。就職面接の際にはどのような点に留意すればよいのでしょうか?

企業の採用については、採用の自由が保障されており、誰をどのような条件で採用するのかは、基本的には企業の自由ですが、法律その他の制限がない限りという限定が付いています。
就職面接も採用活動の一環として、どのような方法で、どのような時間に、実施するのかについての法的な規制はありませんが、学生・求職者の基本的な人権を尊重するものでなければならず、質問内容については、プライバシーを侵害することのないようにしなければなりません。元々、就職面接は、応募者の適性や能力を確かめるために行われるものであり、それ以外の私的なプライバシーにわたることは訊くべきではありません。

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企業の採用の自由の保障

憲法22①は職業選択の自由を保障し、また憲法29は広く経済活動の自由を保障しており、民法の大原則である契約締結の自由が保障されています。両者が結びついて、企業には採用の自由が認められています。
したがって企業には、原則として、労働者の採用の有無、採用基準、採用条件を自由に決定することができます。

法律その他による制限

企業には採用の自由が認められますが、法律その他によって一定の制限が課せられる場合等があります。その代表的なものは以下のとおりです。

  • (1)男女雇用機会均等法による性別等を理由とする差別の禁止
    • ①募集・採用についての性別を理由とする差別の禁止(男女雇用機会均等法5)
    • ②合理的な理由がないにもかかわらず、募集・採用に当たって、
      ・労働者の身長、体重、又は体力を要件とする
      ・転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすることの禁止(男女雇用機会均等法7)
      注:以上の規定は、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分における募集・採用にあたって、女性に有利な取扱いをすることを妨げるものではありません。(男女雇用機会均等法8)
  • (2)労働施策総合推進法9による年齢制限の禁止
  • (3)障害者雇用促進法34による障害者差別の禁止
  • (4)定年後の継続雇用制度の導入の場合(高年齢者雇用安定法9条①)の定年後再雇用
  • (5)次に該当する行為を行った場合の派遣先事業主による派遣労働者に対する雇用契約申込みなし(労働者派遣法40条の6①)
    • ①派遣禁止業務に派遣を受ける場合(労働者派遣法4条③)
    • ②派遣元事業主でない者からの労働者派遣の役務の提供を受けた場合(労働者派遣法24条の2)
    • ③派遣可能期間である3年を超えて派遣労働者の役務の提供を受ける場合(労働者派遣法40条の2①)
    • ④派遣可能期間の3年を延長した場合に、その3年を超えて派遣労働者の役務の提供を受ける場合(労働者派遣法40条の3)
    • ⑤偽装請負により労働者派遣の役務の提供を受けた場合

公正な採用選考の取組

企業が、学生・求職者らの応募者に対して、どのような採用手続で選考をしなければならないのかについて法的な規制はありませんが、応募者である学生・求職者の基本的人権は尊重しなければなりません。
募集・採用選考については、基本的に公正なものであることが求められており、その公正とは応募者の適性、能力のみを基準として行うことが重要であると考えられています。
具体的には、本籍地や家族の職業など本人に責任のない事項や、宗教や支持政党などの個人の自由であるべき事項など、本人が職務を遂行できるかどうかに関係のない事項を採用基準とすることや、それらの事項を応募用紙や面接などによって把握することは、就職差別につながるおそれがあります。

  • 【参考となる法律、通達、裁判例】
  • ●憲法22①、29
  • ●人権教育及び人権啓発の推進に関する法律7条(基本計画の策定)
  • ●人権教育・啓発に関する基本計画(平成14年3月15日閣議決定)
    第4章-2-(5)
    ④ 雇用主に対して就職の機会均等を確保するための公正な採用選考システムの確立が図られるよう指導・啓発を行う。(厚生労働省)
  • ○公正な採用選考について(採用選考時に配慮すべき事項)
    https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo.htm
  • ●三菱樹脂事件(昭48.12.12最大判)
    要旨  憲法は、思想、信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方で、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業には、経済活動の一環として行う契約締結の自由があり、自己の営業のためにどのような者をどのような条件で雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由に行うことができる。
  • https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/00044.html
  • 厚生労働省法令等データベースサービス
  • e-Gov