事業者・労務管理担当の方のQ&A

その他

職場でのハラスメントがあって、メンタルヘルス不調で休職した者が、近々復職します。ハラスメントによる休職を繰り返したくはないので、ハラスメントの再発を防ぐための対応策や、休職中の本人や職場に対するフォローアップ、また、円滑に復職させるにはどのようなことに留意すればよいのでしょうか?

ハラスメントの再発防止にあたっては、職場が労働者にとって安全で快適な環境となっているか、新たな行為者が発生する環境となっていないか、といった視点を持って、行為者も含め全体的な再発防止研修の実施だけでなく、職場内のコミュニケーションや人間関係の希薄化、長時間労働の恒久化等がないか確認し、職場環境の改善も含めた取組をすることが重要です。
また、メンタルヘルス不調で休職した者が復職するに当たっても、企業における慎重かつ入念な準備と援助が必要となります。それらの対策のポイントは次のようなものです。なお、パワーハラスメントの防止に関しては、令和2年6月に施行された改正労働施策総合推進法において事業主に対応が義務付けられることとなりました。

セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)、妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメント、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するために事業主が講ずるべき措置

(1)事業主の方針の明確化及び周知啓発
セクハラ、妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメント、パワハラがあってはならない旨の方針を明確化し、これを、管理監督者を含む労働者に周知、啓発しましょう。また、セクハラ、妊娠・出産、育児休業等に関するハラスメント、パワハラを行った者については厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則等の文書に規定し、これを、管理監督者を含む労働者に周知、啓発しましょう。

(2)相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備
相談窓口をあらかじめ定め、内容や状況に応じ、相談窓口担当者が適切に対応できるようにしましょう。現実に生じている場合だけではなく、発生の恐れがある場合や、ハラスメントに該当するか否かが微妙な場合であっても広く相談に対応するようにしましょう。

(3)発生したハラスメントへの迅速かつ適切な対応
ハラスメントが生じた際には、事実関係を迅速かつ正確に確認しましょう。事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行い、また、行為者に対する措置を適正に行いましょう。併せて、再発防止に向けた措置を講ずることも大切です。

(4)職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
事務体制の整備等、事業主や妊娠した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講じましょう。

(5)併せて講ずべき措置
相談者、行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知しましょう。また、相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発しましょう。

メンタルヘルス不調で休職した者の職場復帰のために講ずべき措置【衛】

心の健康問題で休業している労働者が円滑に職場復帰するためには、職場復帰プログラムの策定や関連規程の整備等により、休業から復職までの流れをあらかじめ明確にしておくことが必要です。事業主は、以下のような点に注意しながら、衛生委員会等において調査審議し、職場復帰支援に関する体制を整備・ルール化し、教育の実施等により労働者への周知を図っていきましょう。

(1)病気休業開始及び休業中のケア
労働者から管理監督者に主治医による診断書(病気休業診断書)が提出され、休業が始まります。管理監督者は、人事労務管理スタッフ等に診断書が提出されたことを連絡します。休業する労働者に対しては、必要な事務手続きや職場復帰支援の手順を説明します。労働者が病気休業期間中に安心して療養に専念できるよう、傷病手当金などの経済的な保障、不安、悩みの相談先の紹介、公的または民間の職場復帰支援サービス、休業の最長(保障)期間等などについて情報提供等の支援を行いましょう。

(2)主治医による職場復帰可能の判断
休業中の労働者から事業者に対し、職場復帰の意思が伝えられると、事業者は労働者に対して主治医による職場復帰が可能という判断が記された診断書の提出を求めます。診断書には就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を記入してもらうようにします。
主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可能性を判断していることが多く、必ずしも職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとの判断とは限りません。このため、主治医の判断と職場で必要とされる業務遂行能力の内容等について、産業医等が精査した上で採るべき対応を判断し、意見を述べることが重要です。
なお、あらかじめ主治医に対して職場で必要とされる業務遂行能力に関する情報を提供し、労働者の状態が就業可能であるという回復レベルに達していることを主治医の意見として提出してもらうようにすると良いでしょう。

(3)職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
安全でスムーズな職場復帰を支援するため、最終的な決定の前段階として、必要な情報の収集と評価を行った上で職場復帰ができるかを適切に判断し、職場復帰を支援するための具体的プラン(職場復帰支援プラン)を作成します。この具体的プランの作成にあたっては、事業場内産業保健スタッフ等を中心に、管理監督者、休職中の労働者の間でよく連携しながら進めます。

(4)最終的な職場復帰の決定
上記(3)を踏まえて、事業者による最終的な職場復帰の決定を行います。

  • ア 労働者の状態について、疾患の再燃・再発の有無等について最終的な確認を行います。
  • イ 就業上の配慮等に関して、産業医等は「職場復帰に関する意見書」等を作成します。
  • ウ 事業者は最終的な職場復帰の決定を行い、就業上の配慮の内容についても併せて労働者に対して通知します。
  • エ 職場復帰についての事業場の対応や就業上の配慮の内容等が労働者を通じて主治医に的確に伝わるようにします。

(5)職場復帰後のフォローアップ
職場復帰後は、管理監督者による観察と支援のほか、事業場内産業保健スタッフ等によるフォローアップを実施し、適宜、職場復帰支援プランの評価や見直しを行います。

  • ア 疾患の再燃・再発についての早期の気づきと迅速な対応が不可欠です。また、新しい問題の発生等の有無の確認も大切です。
  • イ 勤務状況及び業務遂行能力について、労働者の意見だけでなく、管理監督者からの意見も合わせて客観的な評価を行います。
  • ウ 職場復帰支援プランが計画通りに実施されているかを確認します。
  • エ 通院状況、病状や今後の見通しについての主治医の意見を労働者から聞きます。
  • オ 職場復帰支援プランについて、さまざまな視点から評価を行い、問題が生じている場合は、関係者間で連携しながら、その内容の変更を検討します。
  • カ 職場復帰する労働者がよりストレスを感じることの少ない職場づくりをめざして、作業環境・方法や、労働時間・人事労務管理など、職場環境等の評価と改善を検討します。
  • キ 職場復帰をする労働者を受け入れる職場の管理監督者や同僚等に、過度の負担がかかることのないよう配慮します。
詳しく知りたい方はこちら

「職場におけるハラスメント対策マニュアル~予防から自己対応までのサポートガイドライン~妊娠、出産等に関するハラスメント、セクシュアル・ハラスメント起こさないために」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000181888.pdf

「あかるい職場応援団~ハラスメント裁判事例、他社の取組などハラスメント対策の総合情報サイト~」厚生労働省
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/
上記サイトでは、「パワーハラスメント対策導入マニュアル」のダウンロードができるほか、裁判例の解説、イラストや動画を用いたパワーハラスメントについての解説などが提供されています。

「~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~改訂 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/H25_Return.pdf

  • 厚生労働省法令等データベースサービス
  • e-Gov