事業者・労務管理担当の方のQ&A

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社員の副業や兼業は、会社の労務提供に支障となる恐れがあること等から原則禁止とし、やむを得ない事情がある場合は、会社の許可を要することとしていますが、問題となることはありますか。

収入を増やしたい、自分が活躍できる場を広げたい等の理由から、2つ以上の仕事を掛け持ちすることを希望する労働者が増加傾向にあるといいます。
こうした副業・兼業については、労働者が副業・兼業を通じて、自社では得られない知識やスキルを獲得することができる、優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する等、企業にとってもメリットがあると考えられます。
そして、人生100年時代を迎え、労働者が若いうちから、自らの希望する働き方を選べる環境を作っていくことが必要であり、副業・兼業は、オープンイノベーションや起業の手段としても有効であるなど、社会全体としてその促進を図っていくことが求められているといえるでしょう。
副業・兼業に関する裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であるとされています。
各企業の就業規則においては、長時間労働、企業への労務提供上の支障や業務上の秘密の漏洩等を招かないようにするため、副業・兼業を禁止しているとか、一律に許可制にしている例が見られますが、裁判例を踏まえると、副業・兼業が各企業の業務に支障をもたらすものかどうか検討し、そういった事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則として、副業・兼業を行うことができる環境を整備することが求められます。
実際に副業・兼業を進めるにあたっては、労働者と企業の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者の間で十分にコミュニケーションをとることが重要です。そして、労働契約の下では、企業は「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするもの」(労働契約法第5条「安全配慮義務」)とされていること、一方、労働者は、使用者の業務上の秘密を守る義務(秘密保持義務)、使用者と競合する業務を行わない義務(競業避止義務)、使用者の名誉・信用を毀損しない義務(誠実義務)を負っていることなどに十分留意する必要があります。

具体的には、副業・兼業については、就業規則等において、労働者は届出等によって副業・兼業ができることを定めたうえで、次の①~④に該当する場合には、副業・兼業を禁止又は制限できることとしておくことが考えられます。

  • ①労務提供上の支障がある場合
  • ②企業の秘密が漏洩する場合
  • ③競業により企業の利益を害する場合
  • ④企業の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合

厚生労働省では安心して副業・兼業に取り組むことができるよう、副業・兼業の場合における労働時間管理や健康管理等に関するガイドライン(「副業・兼業の促進に関するガイドライン」平成30年1月策定、令和2年9月と令和4年7月改定)及び「副業・兼業の促進に関するガイドラインのQ&A」を策定しています。また、「モデル就業規則」では、就業規則の規程例や解説、参考となる裁判例が示されているので、以下をご参照ください。

副業・兼業の促進に関するガイドライン 000962665.pdf (mhlw.go.jp)

副業・兼業の促進に関するガイドラインわかりやすい解説(パンフレット)000996750.pdf (mhlw.go.jp)

副業・兼業の促進に関するガイドライン(リーフレット)000996735.pdf (mhlw.go.jp)

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」のQ&A 000964082.pdf (mhlw.go.jp)

モデル就業規則について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)

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