事業者・労務管理担当の方のQ&A

就業規則・書類の保存

就業規則の変更に労働者から同意を得る場合に、どのような点に注意すべきですか?

労働者に十分説明して、真の納得を得るべきです。
就業規則変更の手続的要件として、過半数労働組合(それがない場合には労働者の過半数を代表する者)の意見聴取(労基90)がありますが、意見聴取の結果としての意見書を付して労基署長に届出(労基89柱書き)をして周知の手続(労基106➀)を踏んだとしても、それだけでその就業規則が労働者に拘束力を及ぼすということにはなりません。
就業規則により労働者に不利益に労働条件の変更を行う場合には、変更の合理性が必要(労契9但書き、10)です。
また、労働者の同意を得て就業規則の変更をする場合、特に労働者の不利益に変更する場合には、その変更の必要性や、具体的な内容、特に不利益となる事項についての十分な説明が必要となります。労働者の同意を得たように見えても、「同意書に署名をもらったから大丈夫」「何も異議が出なかったから大丈夫」と考えないで、慎重な説明や情報提供が必要となります。
もちろん、これは必ずしも不利益変更とは言えない場合であっても、労働条件の変更(例えば、作業管理方法の変更、労働時間管理方法の変更など)全般にあてはまります。労働者が変更を真に理解していなければ、不十分なものとなってしまいますので、就業規則の変更の説明には十分な情報提供と労働者の理解が必要です。

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就業規則の不利益変更の場合の労働者の同意

就業規則を労働者の不利益に変更するためには、労働者との合意が必要です。例外的に、就業規則の変更に合理性のある場合であって、それが周知されたときには、それに反対する労働者も拘束することになります(労契9,10)。では、労働者が同意をした場合には、合理性は問題とはならないのでしょうか。不利益変更を内容とする就業規則に労働者が同意した場合には、反対説はあるものの、その変更の合理性を必要としないとの考え方が多数です。
では、十分な説明も受けないで、「急ぐからとにかく書いてくれ」と言われて同意書に署名してしまったところ、それが予想以上に大幅な不利益をもたらすものであった場合、それでも「同意」があったと考えることは可能でしょうか。これについて判断したのが、山梨県民信用組合事件の最高裁判決(最2小判平28・2・19)です。この判決は、「同意」の有無は慎重に判断すべきものとし、次のように判示しています。
「就業規則に定められた賃金や退職金に関する労働条件の変更に対する労働者の同意の有無については、当該変更を受け入れる旨の労働者の行為の有無だけでなく、当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様、当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも、判断されるべきものと解するのが相当である」
「同意」の有無を慎重に判断すべきであるとの裁判例はこの最高裁判決前から従前からありました(協愛事件、大阪高判平22.3.18など)が、この最高裁判決で、単純に「同意書」に署名をもらえば大丈夫ということはないことが明らかになりました。労働者から同意をもらう際には、十分な説明、特に不利益になる事項についての説明を十分に行い、それに実際に納得してもらう必要があります。

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