事業者・労務管理担当の方のQ&A

就業規則・書類の保存

労基法106条は就業規則の周知義務を定めています。この「周知」の方法として、「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知しなければならない。」と定めていますが、この労基法の定める周知方法以外の周知手続をとっても、就業規則としての効力がありますか。

労基法106条は就業規則の周知義務とその方法を定めており、これに違反した場合には30万円以下の罰金に処すると定めています(労基法120①)し、周知義務を実施していない場合には労基署から指導をされることがあります。他方で、労働契約法7条では就業規則が労働契約内容となる要件として「周知」が定められ、10条では就業規則の変更の効力発生要件として「周知」が必要となっています。そこで、労働契約法に言う「周知」の効力が発生するには労基法所定の方法に厳密によるべきか、それとも「実質的周知」(必ずしも労基法所定の方法によらなくても、労働者が知ろうと思えば知りうる状態にしておくこと)で足りるかは、見解の相違がありますが、多くの見解では実質的周知で足りるとされています(平成24年8月10日基発0810第2号、最1小判平成15年10月10日)。ですから、労基法の定める、就業規則を作業場へ備え付ける、掲示する、写しを交付するといった方法のほかに、内容を説明した要旨を配布するなどした場合にも、就業規則としての民事上の効力は発生します。

(平成24年8月10日 基発0810第2号 最終改正平成30年12月28日基発1228第17号「『労働契約法の施行について』の一部改正について」)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc3845&dataType=1&pageNo=1

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労働契約法は平成19年12月5日に制定され、平成20年3月1日から施行されているが、その後平成24年と平成30年に改正があり、平成24年改正に伴い、「労働契約法の施行について」との通達(平成24年8月10日基発0810第2号)が出されている。
そのなかで、労働契約法7条の「周知」についての説明があり、第3の2の(2)イ(オ)では、以下の通り記載されている。

(オ) 法第7条の「周知」とは、例えば、
① 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
② 書面を労働者に交付すること
③ 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
等の方法により、労働者が知ろうと思えばいつでも就業規則の存在や内容を知り得るようにしておくことをいうものであること。このように周知させていた場合には、労働者が実際に就業規則の存在や内容を知っているか否かにかかわらず、法第7条の「周知させていた」に該当するものであること。
なお、労働基準法第106条の「周知」は、労働基準法施行規則第52条の2により、①から③までのいずれかの方法によるべきこととされているが、法第7条の「周知」は、これらの3方法に限定されるものではなく、実質的に判断されるものであること。

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