従業員から特定日を指定して有給休暇を取得したいと申出がありましたが、本人の営業成績が低調なので出勤を命じたところ、当日は出勤しませんでした。
こうした場合、欠勤として賃金控除や懲戒処分はできるのでしょうか?
労働基準法第39条に定められている有給休暇は「労働者の請求する時季に与えなければならない」(第5項)とされており、労働者からの請求(有給休暇取得日の指定)があれば、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」(同項但書)でなければ、指定された日について有給休暇が有効に成立するとされており、使用者による許可・不許可といった裁量の余地はありません。
したがって、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」でなく、有給休暇が有効に成立した日については、欠勤として賃金控除や懲戒処分を行うことはできず、所定の賃金を支払わなかった場合は労働基準法違反となりますのでご注意ください。
また、出勤を強制した場合には、有給休暇を取得する権利を侵害したとして、損害賠償を請求される可能性があることにもご留意ください。
一方、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者は有給休暇の取得日の変更を命じることができますので(時季変更権)、当該変更を指示した(時季変更権を行使した)にもかかわらず欠勤した場合には、該当日について賃金控除を行うことが可能です。
なお、このような使用者の時季変更権の行使が認められる「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」については、 個別的、具体的、客観的に判断することとされており(S23.7.27 基収2622)、裁判例では、労働者が所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきものとされています。