事業者・労務管理担当の方のQ&A

年次有給休暇

年次有給休暇を取得した者と取得していない者との間で、通常の賃金ではなく昇給や賞与で差をつけることに問題はないでしょうか?

労基法上、昇給させることや賞与を支給することが使用者に義務づけられているわけではなく、各企業で昇給や賞与の制度を設けることは任意ですので、昇給や賞与の制度を設けるか否かやその額、支給基準などは自由に定めることができます。
しかし、昇給や賞与の査定にあたって、年次有給休暇を取得した者と取得していない者とで金額や支給基準に差をつけることは、年次有給休暇の取得を事実上抑制することになってしまいますので、このような不利益な取扱いはしないようにしなければなりません。

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不利益取扱いの禁止

労基法は、年次有給休暇を取得した労働者に対して、使用者が賃金を減額したり、その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないことを定めています(労基法附則136)。
減給するほか、精皆勤手当や賞与を算定する際に、年次有給休暇を欠勤扱いにすることなどが不利益取扱いに当たります(S63.1.1 基発1)。
また、減給や賞与のマイナス査定でなくても、昇給の対象から外すことや、賞与査定の際に年次有給休暇を取得しなかった者にプラスの評価をつけるといったことも、年次有給休暇の取得を抑制することにつながりますので、認められないと考えられます。
〈関連判例〉
日本シェーリング事件(最高裁第一小法廷 平元.12.14判決、ID04803)
【判例要旨】前年1年間の稼働率が80%以下の者について賃金引上げの対象から除外するとの労働協約の条項により、不就労時間に年次有給休暇によるものを含めて稼働率の計算をすることは、労基法がその権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとして公序良俗に反し無効と判示した。
https://www.zenkiren.com/Portals/0/html/jinji/hannrei/shoshi/04803.html

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