事業者・労務管理担当の方のQ&A

賃金

固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?

(1)「固定残業代」とは、一定時間分までの時間外労働、休日労働及び深夜業に対する割増賃金として定額で支払われる賃金をいい、「定額残業手当」や「みなし残業代」などと呼ばれることもあります。固定残業代は、基本給の中に組み込むタイプと基本給とは別の手当てとして支払うタイプがあります。
(2)「固定残業代」を支払うこととする場合、①通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分(固定残業代)とを判別できるようにした上で、②割増賃金に当たる部分(固定残業代)の金額が労基法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払う必要があります(「医療法人康心会事件」最判H29.7.7判決、H29.07.31 基発0731第27号 )。
(3)なお、基本給とは別に支払われている手当が時間外労働等に対する対価(固定残業代)として支払われるものとみなされるか否かは、雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか、具体的事案に応じ、使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容、労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断されます(「日本ケミカル事件」最判H30.7.19)。

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求人の際の労働条件の明示

労働者を募集する際、固定残業代(一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜業に対する割増賃金)を定額で支払うこととする場合には、下記を求職者等に書面等で明示する必要があります(職安法5条の3,則4条の2、H11労告141、最終改正R4厚労告198「職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者、募集受託者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給事業者、労働者供給を受けようとする者等がその責務等に関して適切に対処するための指針」より)。

  • ・固定残業代にかかる計算方法
    (※固定残業代分の算定の基礎として設定する労働時間数及び金額を明らかにするもの)
  • ・固定残業代を除外した基本給の額
  • ・固定残業代の算定基礎となる時間数を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと

雇用する労働者に対する労働条件の明示

労働契約の締結に際し、使用者は労働者に対して、「賃金の決定、計算及び支払の方法」を書面等で明示しなければならないこととされています(労基法15、労基則5①)。
固定残業代の場合、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分(固定残業代)とを判別できるようにしておく必要がある(H29.07.31 基発0731第27号)ことから、就業規則または労働条件通知書等により明確にしておく必要があります。

「労基法37条等に定められた方法」による割増賃金の計算の考え方については、こちらのQ&Aで詳しく解説しています。

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