事業者・労務管理担当の方のQ&A

賃金

歩合給制とはどのような制度ですか?制度の概要や留意点を教えてください。

歩合給制とは、売上高や契約成立件数等の一定の成果に対して、定められた金額を支払う賃金制度のことです。「出来高払制」「請負給制」とも呼ばれます。

労基法27条(出来高払制の保障給)では、歩合給制(出来高払制)で使用する労働者における賃金額について、実際に労働した時間に応じて一定の賃金を保障しなければならないと定められています。
本条は、歩合給制の賃金制度において、使用者が賃金率を不当に低く定めたり、仕事の不出来を理由に賃金を支払わないといった弊害が生じていたことを背景に、労働者の最低限の生活を保障する趣旨で設けられたものです。労働者が就業した以上は、その出来高(成果)が少ない場合であっても一定の賃金を保障することが使用者に義務付けられているのです。
なお、この規定の適用対象となる歩合給制(出来高払制)で使用する労働者には、固定給の部分が賃金総額中の大半(おおむね6割程度以上)を占めている者は該当しないので、この規定の適用はありません。
保障給の金額について労基法上の定めはありませんが、「通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるように保障給の額を定める」べきである(昭22.9.13基発17号、昭63.3.14基発150号・婦発47号)とされ、少なくとも平均賃金の6割程度を保障することが妥当とされています。
この規定に反して賃金の保障をしない使用者については罰則の対象となります。また、実際に保障給を支払わなかった場合だけでなく、保障給を定めていない場合にも法違反が成立すると解される(令和3年版 労働法コンメンタール390頁)ため、この規定の適用対象となる歩合給制を導入する場合には、就業規則や労働契約等で保障給について定めをしておく必要があります。

なお、時間外労働が発生した場合、歩合給に対する割増賃金を支払う必要があります(労基法37条1項)。歩合給に対する割増賃金の計算方法は通常の固定給の場合と一部異なるため注意が必要です。

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最低賃金法の適用

歩合給制についても最低賃金法が適用されるため、1時間あたりに換算した賃金額が最低賃金を下回ることがないようにしなければなりません(最低賃金法4条)。歩合給制における1時間あたりの賃金額は、当該期間に支給された歩合給の金額を同期間の総労働時間で割って算出します(最低賃金法施行規則2条)。
なお、固定給が併給されている場合、固定給部分と歩合給部分をそれぞれ1時間あたりの賃金に換算し、合計した金額が最低賃金との比較対象となります。この場合、支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかは、下記の方法により確認します。

(A)固定給分の1時間あたりの賃金
固定給金額 ÷ 1か月平均所定労働時間
(B)歩合給部分の1時間あたりの賃金
歩合給金額 ÷ 当該賃金計算期間の総労働時間
⇒上記(A)+(B)の金額を最低賃金額と比較する

(最低賃金については、こちらのQ&Aでも詳しく解説しています)。

割増賃金の計算方法

歩合給の割増単価(1時間あたりの賃金)は、算定期間内に支払われた歩合給の総額を同期間の総労働時間で除して算出します(労基法37条1項、労基法施行規則19条1項6号)。
また、歩合給の賃金額は時間外労働分も含めた総労働時間における成果によって計算されるため、100%分については支払い済みであると考えられ、割増賃金としては、割増分のみの支払いで足りるのが原則とされています(昭23.11.25基収3052号、昭63.3.14基発150号、平6.3.31基発181号、平11.3.31基発168号)。
以上を踏まえ、歩合給の割増賃金は、原則として下記の方法により計算します(割増賃金の計算については、こちらのQ&Aでも詳しく解説しています)。

(1)時間外労働の割増率の計算方法
1時間あたりの賃金(歩合給の総額 ÷ 総労働時間)×割増率0.25 × 時間外労働時間
(2)法定休日労働の割増率
1時間あたりの賃金(歩合給の総額 ÷ 総労働時間)×割増率0.35
× 法定休日労働時間

※深夜(22時~翌5時)の場合は、上記割増率に0.25を加算
※時間外労働が1か月60時間を超えた場合は、その超えた部分について上記割増率に0.25を加算

なお、固定給と歩合給が混在している賃金制度の場合、固定給部分と歩合給部分の割増賃金をそれぞれ計算する必要があります(労基法施行規則19条1項7号)。

自動車運転者の歩合給

タクシー、トラック等の自動車運転者については、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平1.3.1基発93号、平9.3.11基発143号、平11.3.31基発168号、令4.12.23基発1223号)において、歩合給の賃金制度についても基準が示されています。
この通達では、保障給について「歩合給制度が採用されている場合には、労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めるものとすること」と具体的な金額が示されているほか、歩合給の金額が非連続的に増減する「累進歩合制度」は長時間労働やスピード違反、交通事故の防止の観点から廃止すべきとされています。

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(令4.12.23基発1223号)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/roudoujouken05/index.html

≪累進歩合制度の例≫

累進歩合制度の例
  • 厚生労働省法令等データベースサービス
  • e-Gov