会社は、ハローワークに求人の申し込みをする場合や、求人情報誌、ホームページ等で労働者の募集を行う場合は、労働時間、賃金など労働条件を明示することが義務付けられています(職業安定法5の3)。特に、労働時間、賃金など重要な労働条件については、書面によって明示しなければならないことになっています。したがって、会社は、求人票、募集要項等において、労働時間、賃金などの労働条件を明確に記することが必要になります。
書面による明示の方法については、求職者の希望がある場合には、①FAX、②電子メールやWebメールサービス、③LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージ機能等の方法によることが認められています。ただし、求職者がその電子メール等の記録を出力することにより書面を作成できるものでなければならないことになっています(職業安定法施行規則4の2)。
求人票や求人広告にはどこまで細かく書かなければならないのかとの疑問もあるでしょうが、会社としては、ハローワークでの求人票や求人情報誌の求人広告において、求職している労働者にとって、知りたい情報を詳しく、また、誤解ないように明確に記載することが重要です。
また、会社が、職業紹介や募集時に明示した労働条件を変更、特定、削除、追加する場合には、求職者に対して変更する労働条件を明示しなければなりません。ハローワークに出した求人票と採用の際の労働条件通知書が異なる場合について、裁判例の中に「求人票は、求人者が労働条件を明示した上で求職者の雇用契約締結の申込を誘引するもので、求職者は当然に求職票記載の労働条件が雇用契約の内容となることを前提に雇用契約の締結をするのであるから、求人票記載の労働条件は、当事者間においてこれと異なる別段の合意をするなどの特段の事情の無い限り、雇用契約の内容となると解するのが相当である」とするものがあることに留意する必要があります。
なお、ハローワークに提出されている求人票に記載された労働条件と採用面接の際に説明された条件が違う場合において、その事実を労働者がハローワークに申し出たときは、ハローワークが、該当会社に対して事実確認と必要な指導などを行うことになります。
さらに、虚偽の条件を提示して、ハローワーク、職業紹介事業者等に求人の申し込みを行った者は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象となります(職業安定法65)
使用者は労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにすることが重要であることから、労働者及び使用者は、労働契約の内容については、できる限り書面により確認することとされています(労契法4)。
そして、労働者を雇う時に、労働者に対して、一定の労働条件については明示しなければならないこととされています(労働基準法15)。なかでも、労働時間、賃金など重要な労働条件については、書面によって知らせることとされています。したがって、労働者を採用する際には、労働条件通知書で、労働条件をきちんと明示する必要があります。
なお、この明示の方法については、労働者の希望がある場合には、①FAX、②電子メールやWebメールサービス、③LINEやメッセンジャー等のSNSメッセージ機能等の方法によることが認められています。ただし、労働者がその電子メール等の記録を出力することにより書面を作成できるものでなければならないことになっています(労働基準法施行規則5)。書面による明示が義務付けられない事項についても、採用後のトラブルを避けるためにも、できる限り書面で明示することが望ましいでしょう。
なお、厚生労働省がモデル労働条件通知書を示しているので、労働条件の明示に当たってはこれを活用すると便利です。
労働条件通知書は以下に掲載されています。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/
上記の明示されるべき労働条件は、雇用形態に関わらず全ての労働者に共通のものです。パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者などで採用する場合には、それらの雇用形態に応じて、追加して明示しなければならない事項があります(パートタイム・有期雇用労働法6、労働者派遣法31の2)。これらについては、書面(FAX、電子メール等)によって明示しなければなりません。
パートタイム労働者、有期雇用労働者
①昇給の有無
②退職手当の有無
③賞与の有無
④短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
派遣労働者
①昇給の有無
②退職手当の有無
③賞与の有無
④協定対象労働者であるか否か(協定対象労働者である場合には協定の有効期間の終期)
⑤派遣労働者からの苦情処理に関する事項