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年次有給休暇

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年次有給休暇制度(以下、年休)は、毎年一定日数の休暇を与え、しかもその間平常どおりの賃金を支払うことによって、労働者が安心して休養をとり、心身の疲労を回復させるとともに、働きがいのある質の高い労働の実現にも資することを目的とします。年休は、1947年に制定された労基法(同39条)において、労働者の権利として保障されており、使用者が同権利行使を妨げることを罰則付きで禁じるものです。しかしながら、以下図のとおり、年休の付与日数、取得率が低迷しており、2000年以降、50%を割り込む状況が続いていました。これに対し、近時、政府は法改正等を相次いで行っており、2019年の働き方改革関連法では、使用者に年休5日付与義務を新たに課すこととしました。これらの施策を受け、年休の取得率は上昇しており、2024年調査(厚労省「令和6年就労条件総合調査」)では、年休の取得率が65.3%、付与日数11日となり、1984年調査以降では最大の取得率等となりましたが、諸外国の年休取得率と比べればなお低く、政府は「過労死等の防止のための対策に関する大綱(令和6年8月2日閣議決定)」において、2028年までに年休取得率を70%とすることを重要な政策目標の一つに掲げています。

労働政策・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」(2024)

上記図 労働政策・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計」(2024)
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0504.html外部リンク

以下では年休の取得要件、日数、その他年休制度の概要を確認します。

1年休権の発生要件と付与日数

労基法39条は年次有給休暇に関する規定を設け、付与要件、付与日数、取得方法、休暇日における賃金等を定めるとともに、同法附則第136条では年休取得労働者に対する不利益取扱いを禁止する旨の定めを置いています。
まず年休権の発生要件として、雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない旨を、また同2項では、1年6カ月以上継続勤務した労働者(前年の出勤率が8割以上の者に限る。)に対しては、継続勤務2年6カ月までの継続勤務1年ごとに1日、同3年6カ月以後の継続勤務1年ごとに2日を加算した有給休暇(ただし、20日が限度)を与えなければならない旨を定めています。また同3項で週所定労働日数が通常の労働者と比べて少ない労働者に対する付与日数(比例付与日数)を規定します。通常の労働者および比例付与の対象となる労働者の年休付与日数は以下図を参照 ください。

年次有給休暇の付与日数

出所:厚生労働省【リーフレットシリーズ労基法39条】
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-3.pdf外部リンク

年休権の発生要件として、まず「継続勤務年数」が挙げられますが、この継続勤務は、労働契約が存続している期間、すなわち事業場に在籍している期間のことを指します。したがって、労働者が在籍している限り、休職、長期病欠、組合専従等の期間も通算されます。また「全労働日」とは、6カ月又は1年の暦日数(365日又は366日)から所定の休日を除いた日数をいい、その8割以上を出勤することが第2の要件となっています。
全労働日に関し、例えば、裁判所の判決により解雇が無効と確定した場合など、労働者が使用者から正当な理由なく就労が拒まれたために就労することができなかった日が生じることがあります。この場合には、出勤率の算定にあたり、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものとしています。他方で、「不可抗力による休業日」、「使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日」など労働者の責に帰すべき事由によるとはいえない不就労日であっても、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものは、全労働日に含まれないものとします(昭和33年2月13日 基発90号等)。
また業務上の負傷・疾病による療養のための休業期間、労基法第65条に基づく産前産後の休業期間、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」第2条第1号に基づく育児休業の期間又は同条第2号に基づく介護休業の期間については出勤したものとみなして計算しなければなりません(同7項)。さらに年次有給休暇を取得した期間も、出勤したものとして取り扱う必要があります(昭22年9月13日発基第17号)。

2年休の付与単位(暦日・半日・時間単位)

年休の付与単位は1暦日単位での付与が原則であり、労働者が半日単位で請求しても、使用者はこれに応じる義務はありません(昭和24年7月7日基収第1428号、昭63年3月14日基発第150号)。しかしながら、労使合意の上、半日単位での付与の取り扱いを決めること自体は労使自治の範疇であり、年休取得促進にも資するものです。このため年次有給休暇の半日単位の付与は就業規則等の定めがあれば、これを認めており、多くの企業では半日年休を制度化してきました。
また2009年4月に施行された改正労基法では、時間単位年休を新たに設けました。同制度は、年休の取得率促進による仕事と生活の調和を図る目的として、年次有給休暇について5日の範囲内で時間を単位として与えることができることとしたものです。なお同労使協定が締結された事業場においても、個々の労働者が時間単位により取得するか日単位により取得するかは、労働者の意思によるものとされました。時間単位年休に係る労使協定で定める事項としては以下の項目があります。

①時間単位年休の対象労働者の範囲(法第39条第4項第1号関係)
②時間単位年休の日数(法第39条第4項第2号関係)<※5日の範囲内>
③時間単位年休一日の時間数(則第24条の4第1号関係)
④一時間以外の時間を単位とする場合の時間数(則第24条の4第2号関係)

同労使協定については、労基署への届け出は不要とされておりますが、事業場内において保管・従業員への周知は必須とされています 。

【参考】時間単位年休の労使協定例
https://work-holiday.mhlw.go.jp/planned-granting/procedure.html外部リンク

3労働者の時季指定

年次有給休暇は原則として、「労働者の請求する時季」に与えなければなりません(労基法第39条第4項)。労働者が指定した具体的な月日が年休付与日となり、分割するか、又は何日継続するかも、原則として労働者が決定でき、使用者の承認は必要ではありません(白石営林署事件:最判昭和48・3・2民集27巻2号191頁)。
他方で労働者から指定された時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる」場合には、事業運営との調整を図るため、使用者は時季変更権を行使することができます。適法に時季変更権が行使された場合、労働者による具体的な年休の時期指定に係る効果発生はいったん阻止されることとなります(「時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として発生する」前掲・白石営林署事件最判)。なお時季変更を行う事由が消滅した後はできるだけ早く年次有給休暇を与えなくてはなりません(昭23.7.27 基収第2622号)。
「事業の正常な運営を妨げる」とは、例えば、年末等特に業務繁忙な時季を指定する場合や同一時期に多数の労働者の年次有給休暇指定が競合したため、その全員に年次有給休暇を付与し難いという場合などを指します。この「事業の正常な運営を妨げる」場合であるか否かの判断は、請求を行った労働者の所属する事業場を基準として、個別的、具体的に客観的に判断されます(昭23.7.27 基収第2622号)。その一例として、年休の時季指定に対し、使用者が時季変更権を行使した事案につき、判例(弘前電報電話局事件 最2小判昭和62.7.10労判499号19頁)は、「勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能であるにもかかわらず、休暇目的によってそのための配慮をせずに時季変更権を行使することは許されない」とします。
また年休申請による休暇が1箇月など長期に及ぶ場合、使用者の時季変更権が認められるか争われることがありますが、判例(時事通信社事件 最3小判平成4.6.2)は、年休による長期休暇取得の場合には、「右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関して、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない」とし、時季変更権の行使を認めています。

4計画年休制度について

以上のとおり、年休権発生後、労働者自身の時季指定をもって年休付与がなされますが、その例外として年休の計画的付与制度が設けられています。同制度は年休の取得促進を目的に、使用者が労使協定により、年次有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、その労使協定で定めたところによって5日を超える分につき、年次有給休暇を与えることができる制度です(労基法第39条第6項)。同計画年休は5日を超える部分のみを対象としますが、その目的として、年休日数のうち5日は個人が自由に取得できるようにすることが挙げられています。計画的付与の方式については、①事業場全体の休業による一斉付与方式、②班別の交替制付与方式、③年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式等があり、労使協定において、その事業場の実情に応じて適切な方法を選択することになります 。

【参考】年次有給休暇の計画的付与制度
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/dl/101216_01e.pdf外部リンク

【参考】就業規則・労使協定例
https://work-holiday.mhlw.go.jp/planned-granting/procedure.html外部リンク

5使用者の年休付与義務

さらに2019年施行の働き方改革関連法では、年次有給休暇の取得促進を目的に、使用者に対し、2019年4月1日以降の基準日に10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者を対象に、その基準日から1年以内に5日以上の年休付与義務を課しています(労基法39条7項)。使用者の時季指定がなされる場合、あらかじめ使用者は当該労働者にその時季につき意見を聴かなければならず、その聴取した意見を使用者は尊重するよう努めなければなりません(労基法施行規則24条の6)。同条違反に対しては、罰則規定(30万円以下の罰金)が設けられています。他方で基準日から1年以内に、労働者本人が自ら5日(1日または半日単位)の年休を取得するか、または計画年休をもって5日分の付与がなされた場合には、使用者の時季指定義務自体が消滅します。このため、実際の運用では、まずは労働者に対する年休取得勧奨または前記の年休の計画的付与が優先され、基準日から1年までの間に5日の年休取得が進まない場合に、使用者の時季指定による付与がなされることが多いものです。なお同改正に伴い、同指定義務の履行確認を行うべく、新たに使用者に対し、労働者ごとの年次有給休暇管理簿 (時季、日数及び基準日記載)の作成および当該期間満了後3年間の保管が義務づけられています(労基法施行規則24条の7)。

年次有給休暇管理簿

出所:厚生労働省【年次有給休暇管理簿について】
https://jsite.mhlw.go.jp/yamaguchi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/roudoukijun_keiyaku/nennkyuukannribo_01.html外部リンク

6年休付与の効果

労働者が年休の時季行使を行うか、または労使協定による計画年休日の特定によって、年休の効果が生じることとなりますが、この場合の法的効果として、当該年休指定日等に係る就労義務が免除され、法所定の賃金請求権が生じます。その際の賃金額が問題となりますが、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、①所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、②平均賃金、③健康保険法第40条第1項に基づく標準報酬日額(労使協定がある場合に限る。)のいずれかを支払わなければなりません(労基法第39条第9項)。これらのうち、いずれを支払うかについては労働者各人についてその都度、使用者の恣意的選択を認めるものではなく、就業規則等であらかじめ定めておかなければならず、定めた場合には必ずそれに従って支払わなければなりません(昭27.9.20 基発第675号)。

7年休権の消滅

年休権の時効消滅については、労基法第115条に基づき2年の消滅時効にかかると解されており、年休発生日から2年間は行使可能です。したがって、例えば就業規則において年次有給休暇は翌年度に繰り越してはならない旨を定めたとしても、年度経過後における年次有給休暇の権利は消滅しません(昭23.5.5 基発第686号)。
また労働者が会社を退職した場合、退職日をもって年次有給休暇の権利は消滅します。退職間近に労働者が残存年休の全てを使い切って退職したいと申請する場合がありますが、退職をもって年休権が消滅することから、使用者の時季変更権を行使しえず、同年休取得を認めるほかありません。業務の引き継ぎなどが必要な場合には、同退職労働者と話し合い、退職日を遅らせるなどの対応などが考えられます。